2011/09/23 名古屋宗次ホール

●名古屋:宗次ホール

2011年9月23日(金・秋分の日)
スイーツタイムコンサート 13:00開場 13:30開演

詳細>>HP

※曲目変更のお知らせ:
当日はバルトーク、リスト、レーガーの左手作品と、近藤浩平:海辺の祈り、海辺の雪、他を入れたプログラムになります。



演奏後記

今回で3回目となる宗次ホールの公演でした。

コンサートの2日前に、台風の影響から名古屋で100万人以上に避難勧告がでるという非常事態がおきました。母方の実家が名古屋であり、伊勢湾台風の話を昔から聞かされていたのですが、今回の台風では、その話が頭をよぎりました。

幸いな事にコンサート当日は天候に恵まれ清々しい秋晴れの一日でした。
名古屋に演奏を通して戻れる事は、とても嬉しいです。

去年のコンサートから一年が過ぎた事になります。その間にも「左手のアーカイブ」が少しずつ形になり、10月には第4作目のCD完成予定など、演奏家としての方向も徐々に定まってきているような気がします。

この一年の間と言えば、一番大きな事は3月に起きた大震災でしょう。価値観を根底から覆される衝撃が世界に走りました。私たち音楽家の間でも、今までのような姿勢で社会と接していて良いのだろうかと悩む者が多くいます。いろいろと考えさせられます。

今回はこのコンサートから2曲ほど演奏を一般公開させていただきます(近藤浩平さんの作品)。震災に関連した楽曲ですが、この日本的な無の美しさをもつ音楽は、心奪われるような魅力を持っています。繊細なタッチと重厚な音を持ち合わせるスタインウェイのピアノ、音が美しく伸びるホール、響きにゆったりと身を委ね、演奏会の事を思い出していただければ幸いです。

今後とも応援のほど宜しくお願いいたします。

智内威雄(2011年9月23日)

会場の声

●娘がピアノを勉強しているのですが、部活動中に右手薬指を骨折し、しばらく右手でピアノの練習ができなくなりました。発表会を前に左手だけで弾ける曲はないかとYouTubeなどの動画サイトで色々探していました。そんな時、智内さんが演奏するカールライネッケの「左手のためのピアノソナタ」を拝聴しました。その出会いは衝撃的で本当にびっくりし、とても気に入りました。娘もとても気に入り、10月の発表会ではこのソナタの2楽章を弾くことにしました。左手だけで弾く練習は、娘にとっては苦労することも多く、なかなか大変そうです。しかし、すてきな曲になるように日々励んでいます。今日は娘も連れて、とても楽しみにコンサートに来ました。またコンサートを開かれるときは是非左手のためのソナタを演奏してください!どの演奏もとても素敵でひきこまれました。特に娘2人と私が一致して気に入ったのは、スクリャービンの夜想曲でした。ありがとうございました!!40代女性

●とても精神性の高い音楽を聴かせていただきました。音楽は人ですね。心が深く引き込まれたコンサートでした。またの機会を楽しみにしております。30代女性

●6月の演奏会で初めて聴かせて頂きました。音色の豊かさ、広がりを感じ、とてもきれいでした。同じ病を持つピアニストとしてとても共感を覚えました。前回は音楽教室大のホールでしたので、失礼に聞こえるかも知れませんが、それ程響きの豊かさを感じることができませんでしたが、本日のホールは違和感なく、演奏に聴き入る事が出来ました。今日来て良かったです。ありがとうございます。レーガーの「フーガ」はどのようにしたらあの表現ができるのでしょうか?pp(ppp)の響きがとてもきれいでした。「スクリャービン」・・・力強さと繊細さが感じられてとても良かった。右手だけの曲もありますか?50代女性

●すばらしい演奏をありがとうございました。映画「黒いオルフェ」を聞いて青春時代を思い出しました。50代

●宮沢賢治のセロ弾きのゴーシュのお話に出てくるセロの中に入れてもらってゴーシュに演奏してもらい、出てきてみたら病気が治っていた小動物のような気持ちです。智内さんの性格?!が垣間見えるような演奏でした。大胆で男らしい方でしょうか?もう少し細やかで優しいのが個人的には好みですわ。でも力強くてよかったです♪左手のみを使った演奏をなさる事、苦しみを乗り越えて前進して来られた事、私と同じ年・・・ということで興味を持ち、滅多にコンサートに足を運ぶことのない私がのこのこと出向いて参りました。そんなことを語るよりも演奏を聞いて!とお思いかもしれないのですが、私はそういう内面の変わりゆく様、心の力が発揮されて現在に至ったお話を是非聞いてみたいです。来させて頂いてとても良かったです。智内さんが元気でイキイキ、サバサバと活躍されている姿に刺激を受けました。私も元気でイキイキ、サバサバと生きたくなりました。ありがとうございました。益々活躍なさって下さいませ。30代女性

●いつも大変素晴らしい演奏に感激致します。心を洗われるような、魂の浄化されるようなピアノの音、どうするとあの音が出るのでしょう。全くの趣味でピアノを楽しんでいますが、音とは多ければにぎやかというものでもなく、一音の響きが大切なことを学びます。ピアノを弾いておられるというより、ピアノと一体となり、また、思いがそのまま指先からピアノを通して音となり、聴く者に伝わる感じです。ほんとうにほんとうに素晴らしいです。精神生活も音となって現れるのかも知れません。ピアノの練習と共に心も美しく心掛けたいと思います。60代女性

●近藤浩平による2曲。3.11の情景が目に浮かびました。ピアノの余韻がお寺の鐘のような響きに聞こえ、祈りの声を発しているようでした。今日は2階で聞かせていただきました。低音がよく響き、力強さを感じました。暗い中で響きました。70代女性

●正しく弾くということは論外の事として、演奏家それぞれに個性が感じられ、おもしろく思います。貴殿の演奏は一つ一つ音が秀出て踊り出す趣きがあります。Balletではなく、歌舞伎の例えば娘道成寺で女形が乱舞するような。次の宗次ホールでの演奏会を楽しみにしております。60代男性

●素晴しい演奏を聴かせて頂き、どうも有難うございました。ここ迄の御苦労と苦悩を思いながら、一音一音に耳を傾けて居りました。どうぞ今後も御身体を大切に一層の御活躍をお祈り申し上げます。60代女性

●スバラシイ!!私右半身付随ですが、リハを頑張り、真多呂人形を教えています。あなたからパワーをもらったわ!これからもどうぞガンバッテ、スバラシイ人生を!!

●色の彩がとってもくっきりと、そして絡み合った音でした。とても片手だけとは思えなく感動しました。

●全ての曲が良かったです。目をつぶって余韻に浸りながら、時々、目を開けて本当に左手だけかしらと見ていました。60代女性

●左手だけの演奏とはとても思えない程すばらしい演奏でした。海辺の祈り、海辺の雪は感動しました。60代男性

●どの曲も左手だけで弾いているとは思えないほど迫力があってすごいと思いました。スクリャービンの曲とアンコールの曲がとても良かったです。

●私は絵を描きます。今日初めてレーガーの曲を聴きましたが、眼を閉じているとピアノの曲に乗って、次々と様々なエスキースが頭の中に浮かんできました。力強く、又、楽しく、穏やかにと眼の前で見ている様になるので不思議です。50代女性

●初めて演奏聴かせていただきました。片手だけで弾いているとは思えないすばらしい演奏でした。音の厚みや色彩感豊かな演奏に引き込まれ圧倒されました。左手だけでピアノを練習している友人と一緒に聴きに来ましたが、とても励ましをいただきました。女性

会場の音



Music “Snow on the Seashore: In memoriam of the victims of the earthquake and the tsunami” [Op.122]
Composed by Kohei KONDO. [http://koheikondo.com]
Music “Prayer on the Seashore: In memoriam of the victims of the earthquake and the nuclear reactors” [Op.121]
Composed by Kohei KONDO. [http://koheikondo.com]

2011/08/21 茨城 鹿嶋勤労文化会館大ホール

●茨城県鹿嶋市
鹿嶋勤労文化会館大ホール
8月21日 17時開演(16時半開場)

入場料:2000円、高校生以下1500円
問い合わせ:ミュージックプラン ヴィヴァーチェ(小沼)090-2450-5155

※震災や計画停電などで中止や変更になることがあります。ご確認のうえお出かけください。

<震災に関連した初演曲を含むコンサートとなります。>



演奏者の声

鹿嶋勤労文化会館に足をお運びいただき有難うございました。

初めての茨城県での演奏会となりました。このコンサートは震災前に組まれたものでして、スタッフの方々のご尽力により、苦難を乗り越え実現に結びついたコンサートでした。私にとりましても大変思い出に残る会となりました。この場をお借りして御礼申し上げます。

以前から茨城をはじめ、関東の方々から、東北の報道の影に隠れてしまい、被災した悲しみをどこにもっていけば良いのか分からなく辛い、という事を聞いていました。故郷が傷つくという事は、震度の大小など数値だけでは計りえない苦しみなのではと察します。日頃からそうした苦労をされている方々を、日本中が忘れてはいけない事だとも感じます。

クラシック音楽の楽曲にとり、初演をする場所とは、とても重要な意味を持つのですが、今回は鹿嶋でのコンサートという事もあり、震災に関連した2曲を初演させて頂きました。(黒澤健さんと、近藤浩平さんの作品)

この曲達を演奏する度に、鹿嶋のこの演奏会を思い出す事となります。

また皆様のもとに演奏を通して戻って来られる日が来るよう精進して参ります。

智内威雄(2011年8月21日)


会場の声(アンケート掲載)

●”左手だけ”の音楽とはとても思えなかった。映像が音と共に降りてくるような素晴らしい演奏でした。ピアノ自体の演奏の「可能性」を感じさせてくれる一つの「夢」の時間でした。是非また智内さんの演奏を聴きたいです。30代男性

●左手だけとか、両手でとか全く意識の中からは消し去られて、ただただ純粋に音の響きに引き込まれて、音楽の調べに身を委ねて久しぶりにリラックスしている自分に気付きました。私たちは普段「これに関してはこのやり方で、この方法で!」とか「その場合、こうあるべき、~であらねばならない」とか知らず知らずのうちに自分を様々な制約で縛ってそのことに何の疑問に感じずに生きていますが、智内さんの演奏を聴いて、ふとそのたがを外して、あるいは少し枠から外に出て物事を見てみると、もっと伸び伸びと自然体に美しいものをもっと自由な心で真に感じることができるようになるのではないか・・・と感じさせられました。人間は気付かないうちにいろんなものにがんじがらめになって息苦しくなることが多いけれど、智内さんの演奏を通して「大丈夫、肩の力を抜いて、ゆっくり深呼吸して自分らしいリズムで歩いていいんだよ」と言ってもらったような気がしました。「海辺の祈り」「海辺の雪」・・・3/11のあの日、東北の津波に呑み込まれていく、故郷を声もなく歯を喰いしばって丘の上から涙を静かに流しつつ見守り、立ち尽くしていた人々の姿を思い出しました。私の親族も福島出身で新潟に避難していますが、今、改めて静かに被災された方々の心に寄り添い祈りを捧げたいと思います。ありがとうございました。40代女性

●今日は素晴らしい演奏をありがとうございました。千葉県から来ました。私も小2~高1までピアノを習っていて、弾けそうな曲もあったので、嬉しかったです。目を閉じて聞いていると、左手だけとは思えない演奏にびっくりしたり感動したり・・・。私も人生いろいろあり辛かった時にテレビで智内さんの事を知り、ホームページなどを見てから、自分にできることをまずはやってみようと思うようになりました。これからもがんばって下さい。私もがんばります!今日は本当にありがとうございました。40代女性

●片手でも素晴らしい演奏ができることがよく分かりました。右手の分もより多くの鍵盤を弾かなくてはならないので、普通のピアニストの方より大変ではないのかなあと思います。震災から5ヶ月が過ぎ、道路や公共施設も修復されておらず余震も続く中で不安も多いですが、励まされました。ありがとうございました。これからも頑張って下さい。応援しています。40代女性

●とてもきれいなきょくばかりで、両手じゃなくて片手でもじょうずにでき、こんなの、はじめて目にしました。左手のピアニストというからどんなかなぁーと思っていました。私が大好きなきょくばかりで、とてもいいきょくがきけたのでよかったです。またこんなきかいがあったらなあと思っています。わたしも、ちょっと左手でこんなきれいなきょくをひいてみたいです。このひがし日本大しんさいでうちはひがいがなかったですけど、ともだちのうちは、ひがいがとてもあったみたいです。このじしんでひがいをしたり、つなみにあったりして、なくなった人がいる中で、このチャリティーコンサートをひらいてくれ、元気になった人がきっといると思います。こんど、できたらまた、コンサートをひらいてもらいたいです。8歳女の子

●大阪から嫁に来て30年。こちらの地でのコンサートなどの少なさに淋しく思っております。今日は友人に誘われて参りました。とても心豊かになりました。曲を聞きながらイメージを拡げ、また想いを深める事が出来ました。左手の楽曲の素晴らしさ、智内さんの人柄、努力なさったのだろうなーとの思い、さまざまに感じ、とても心に残る2時間でした。ありがとうございます。感謝。50代女性

●姉に誘われて初めてピアノコンサートに来ました。クラシックコンサートが私に理解できるのか不安でしたが、楽しむことができました。初めてのクラシックコンサートが智内さんでラッキーでした。ありがとうございます。これからも頑張って下さい。30代女性

●左手だけですごかったです。じょうずでした!!ピアノ大好き!!8歳女の子

●久しぶりにピアノのコンサートを聞きました。左手だけの演奏、とても素晴らしかったです。心が癒されました。震災以降、追われるように時を過ごしてきましたが、今夜はゆったりとした至福の時間を過ごせたような気がします。これからもお身体を大切になさって、ますますご活躍なされることを祈っております。50代女性

●力強い演奏で心が弾むように感じました。とても印象的な思いがしています。これからの生活の励みになると感じました。60代

●素敵な演奏を聴かせて頂きありがとうございました。以前、東京にて聴かせていただいており、私の出身地である鹿嶋でも演奏をして下さることを知り、本日は来訪させていただきました。2度目の拝聴になりますが、力強く、美しい音色にはいつも感動致します。今后のご活躍にご期待申し上げております。30代女性

●ありがとうございました。現在東京在中ですが、茨城出身です。都内と違いゆったりとリラックスして聴かせて頂きました。毎回シューベルトのAvemaria涙が出てしまいます。スクリャービン本当に本当に大好きです。11月(3日間)の東京での講座を楽しみにしています。40代女性

●笑顔がステキで演奏は爽やか。ピアノの新しい世界が聴けて楽しかったです。音もとても綺麗。迫力もあり優しさも感じました。40代女性

●大変素晴らしい演奏を有難うございました。とても片手で弾いているとは思えない演奏で感銘しました。楽しいトークを交えての演奏で大変楽しむことができ、もう少し聴いていたい、そんな気持ちになりました。幸せな時間を有難うございました。30代女性

●初めて片腕の演奏を聞きました。左手でどうやって?と思っていましたが、目を閉じるとまるで両手で弾いているようでした。小学校3年の娘と来ましたが、初めて最後まで寝ないで聞いていました。親子共々感激致しました。ありがとうございました。これからも素晴らしい演奏を聞かせて下さい。

●智内さん、本日は本当にありがとうございました。素晴らしい演奏でこの鹿嶋の地で多くの方々をはげまして下さいました。心に響く、心の祈りを一人一人の方が感じて下さったように思われます。この思いを更に広めたていきたく思います。智内さん、これからも私達にすばらしい演奏をお聞かせ下さい。ありがとうございました。沢山の曲をありがとうございました。”智内さんに栄あれ”60代女性

●久しぶりのコンサート、とても楽しかったです。ピアノの音色に心が温かくなりました。私も音楽に関わる仕事をしております。人の心に響く音楽を聴くことができ感動しています。これから今日の事を忘れず、自分も少しでも人に感動を伝えられるような仕事をしていきたいと思っています。ありがとうございました。30代女性

●智内さんのことは報道で知ってはおりました。まさか、生で演奏が聞けるとは思ってもいなかったので、感激です。聞いてみて、本当にすばらしく、ぞくぞくする思いが致しました。左手だけでこんなに素晴らしく人を感動させることができるのですね。両手でひいているのと変わらない気がしました。どうか、これからも、いい曲を沢山ひいて、人々に感動を与えて下さいますように。70代

●大変すばらしい演奏をありがとうございました。要望を言えば日本歌曲なども入れていただいたら幸いです。ポピュラー音楽もよろしく。70代

●今日は鹿嶋まで来て下さり、ほんとうに有難うございました。素晴らしい音色と智内さんの笑顔とユーモアのある語りを楽しませていただきました。右手が使えなくてもこんなにすばらしいと感動しました。一つのことが不可能でも他の分野で努力し、あきらめない大切さを教えていただきました。これからも頑張って多くの人々を励まして下さい。60代女性

●祈り!「ああ、神様なぜ私達人間を苦しめるのですか。」「それはね、他人のいたみが分かるためにそうするんだよ。」演奏中ずっとこの言葉を思っていました。ありがとうございました。70代男性

●素晴らしい演奏をありがとうございました。僕はクラシックやピアノについて詳しくはないのですが、智内さんの演奏が心にしみわたりました。智内さんの演奏に出会えたことで自分ももっと人々の心を動かすことができるような人物になりたいと思いました。これからのご活躍を応援しています!20代男性


●2011年8月22日(月)読売新聞朝刊(茨城版):演奏会後記掲載 >>

左手のピアニスト智内威雄(ちないたけお)さん(35)の東日本大震災復興チャリティーコンサートが21日、鹿嶋市宮中の鹿嶋勤労文化会館で開かれ、苦難を乗り越えた智内さんの美しい演奏が被災地の人たちの心に響いた。

 鹿嶋市内でピアノ教室を主宰する小沼万波さんが昨年末、東京音大の後輩である智内さんの活躍を知り、演奏会を依頼。被災を受け、智内さんの希望でチャリティーコンサートとして開催することになった。

 ほぼ満席の約700人の聴衆を前に、智内さんは難病ジストニアに冒された右手を膝の上に置き、左手で演奏。1曲ごとに曲の解説をするトークライブ形式で、左手で演奏するように編曲されたバッハの平均律第一巻第一番プレリュードやシューベルトの魔王、アヴェ・マリアなどを披露した。震災をテーマにした「海辺の祈り」「海辺の雪」(近藤浩平作曲)もあり、聴衆の中には涙ぐむ人もいた。

 神栖市から来た作沼すい子さん(60)は「片手とは思えないすばらしい演奏。苦難を乗り越えた努力や精神力に心を打たれた」と話していた。

(2011年8月22日 読売新聞)

●2011年8月18日(木)読売新聞朝刊(茨城版):演奏会告知記掲載

希望奏でる左手のピアニスト

 右手を脚の上に置いたまま、左手だけで鍵盤を弾ませ旋律を奏でるピアニストがいる。10年前、留学先のドイツで右手が硬直する病を発症したが、その絶望から立ち上がり、今は関西を拠点に演奏活動を続けている。その音色が、21日、鹿嶋市宮中の鹿嶋勤労文化会館で震災からの復興を目指す被災者の心に届けられる。

左手のピアニストは、大阪府箕面市の智内威雄(ちないたけお)さん(34)。埼玉県蕨市出身で、幼少期からピアノの英才教育を受け、東京音楽大卒業後、ドイツのハノーバー音楽大に留学。数々の国際コンクールで入賞した。

 留学2年目の2001年、智内さんは右手に違和感を覚えた。親指が自由に動かせなくなり、やがて右手の全ての指が内側に丸まった。「ジストニア」と診断された。脳神経の機能異常と考えられ、腕や首、顔などの筋肉が意思とは無関係に硬直する。完治は望みにくい。

 「すっからかんになった。自分の中の芯がなくなった」。ピアノを弾けない喪失感にあえぎ、もう一度、両手で弾けるようになりたいともがいた。その一方で「頑張れば頑張るほど、元の場所にはたどり着けない」と空回りを自覚してもいた。

 2年以上のリハビリ。そんな時に出会ったのが左手だけで弾くピアノ曲の楽譜だ。「片手で弾く曲なんて」。高をくくっていたが、いざ弾いてみると、「楽曲を表現するに至らず、その奥深さに打ち負かされた」。

 その後、負傷や先天性の障害、ジストニアなど、片手のピアニストに用意された曲が多くあることを知った。「障害があってできないことを数えるより、やれることが無数にある」。

 帰国後、阪神大震災のメモリアルコンサートを開いたのを機に関西に拠点を置いた。被災に心を痛め、復興に気をもむ被災者を気遣い、東日本大震災の被災地でもコンサートを精力的に開く計画だ。「何も考えず、音に身を委ね、左手の魅力をゆっくり感じてほしい」。被災地では安らぎのメロディーを奏でたいという。

 シューベルトの「魔王」、ショパンの「別れの曲」などに加え、震災をテーマにした3曲を披露する。午後4時30分開場、5時開演。入場料2000円(高校生以下1500円)。チケット、問い合わせは鹿嶋勤労文化会館((電)0299・83・5911)へ。

(2011年8月18日 読売新聞)

2011/08/20 西宮白鷹禄水苑宮水ホール

●西宮市 白鷹禄水苑 宮水ホール「朗読とピアノ演奏」 8月20日(土)3:30開演(3:00開場) ピアノ:左手のピアニスト・智内威雄 語り:大蔵流狂言方・善竹隆司

前日券:3500円(アカデミー会員:3000円) 当日券:4000円(アカデミー会員:3500円) *アフターコンサートに、出演者を囲んでの「ワンドリンクサービスタイム」がございます。 (全席自由席)お席に限りが御座います。お早めにお申込みください。

お問い合わせ (白鷹禄水苑) Tel:0798-39-0235 Email:ebent@hakutaka-shop.jp



【演奏者の声】

白鷹禄水苑宮水ホールのコンサートにお越しいただき、ありがとうございます。

今回は友人で狂言師の善竹隆司さんとのコラボレーションで、朗読劇仕立ての「怪談」を上演いたしました。狂言に近い発声で朗読をしていただき、会場には主催者の辰馬様の家に伝わる歴史ある衝立、着物、燭台等が配置されました。

狂言と会場と怪談が織り成す空気を妨げぬように、ピアノ演奏では繊細な情景描写を心がけました。いかがでしたでしょうか。

コラボレーションは、一歩間違えると、お互いの個性を打ち消してしまうのですが、今回は台本を工夫したり、祝言性を持たせたりと、非常に充実した舞台となりました。

このような機会を与えていただき感謝しております。こういった試みを通して、これからも音楽の可能性を模索していきたく思います。

また皆様とお会いできることを楽しみにしています。

智内威雄(2011年8月21日)


【会場の声】2011/08/20 西宮白鷹禄水苑宮水ホール(朗読とピアノ)

●ピアノの音も狂言もどちらもすばらしかった。小泉八雲にこのような怪談があったとは驚きです。ピアノと狂言の組み合わせは滅多にないでしょう。会場に対してやや人数が多かったように思います。今後もこういっためずらしい組み合わせで演劇・音楽を楽しませて下さい。

●変わったコラボで夏らしくてよかった。

●楽しみいっぱいの立派な建物でびっくり致しました。又伺いたいと思います。ありがとうございました。

●ピアノの音響など少々懸念されましたが、残響が少々気になった他にはとても満足致しました。雰囲気がとても素晴らしく感激致しました。初めて参加させていただきました。

●智内さんへの質問 ジストニア翻訳本はいつ頃出版されるのでしょうか?楽しみにしています。

●風変わりな怪談ストーリーでした。夏の一夜に面白かったです。江戸の怪談話だったのでしょうか?楽しい時間でした。始まって早々に携帯音の事、キャンディの包みの音、咳をするにもハンカチで口を押さえる事、お互いに気をつけたいものです。素敵な公演を拝聴するために・・・

●ローソクがよかった。酒蔵の雰囲気は効果があった。

●善竹さんの朗読と智内さんのピアノの組み合わせが良かったです。また場所のロケーションがとても合っていたと思います。小泉八雲のこの話をぜひ松江でしたら・・・と思います。

●ピアノの響き、衝立に写るシルエットがより雰囲気を盛り上げて魅せられました。振袖、ススキ、よい雰囲気で100%楽しめました。名前を呼ばれて出てくるまでの間がやや短めで少しあっけなく感じたため、もう少しじらして間をとればもっと後の幸せが際立ったかな?と思いました。

●智内さんの演奏を聴かせて頂き、大変勇気を頂きました!!また智内さんのコンサートを企画して頂きたいです。

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質問への回答

ジストニア友の会のHPより

多くのみなさまから出版要望の声をいただきまして、本当にありがとうございました。㈱音楽之友社からの出版が、ほぼ決定し、現在出版へ向けて詳細を検討中です。みなさまから約300の要望の声をいただき、出版への大きな力となりました。出版が正式に決定しましたら、ホームページでお知らせします。ご協力に心より感謝申し上げます。

平成23年9月 ㈱音楽之友社とNPO法人ジストニア友の会は『musician’s dystonia(音楽家のジストニア)』日本語版の出版契約をしました。

2011/06/29 箕面FM出演

2011年6月29日
箕面FM FM81.6MHz(箕面市周辺地方)
「植田洋子とTea For Two」

15:00~16:00(水曜日)
21:00~22:00(水曜日:再)
18:00~19:00(日曜日:再々)