しかしながら2001年、不運にもジストニアに冒され、ピアニストとしての右手指の機能を失いました。4年間に渡ってリハビリによる治療回復、訓練に専念し、多少回復の兆しは見えたものの完治には至らず、左手の演奏を2004年から始動するに至りました。はからずもハノーバー音楽大学の卒業試験は「左手の為の四重奏曲」を演奏し、審査員満場一致で最優秀賞を得ました。ドイツ、日本で左手によるソロ活動を始め、昨年(2005年)の秋には日本演奏連盟主催、コンチェルトのオーディションに合格、本年3月10日に広島交響楽団とラヴェル・左手の為の協奏曲を協演し好評を博しました。
大きなハンディを抱えながら、不屈の精神力で左手のみの演奏に立ち向かっている若きピアニストです。左手のみによる演奏が演奏家として、また演奏会として、皆様に受け止めて頂けるのか、ご批判、ご指導ご鞭撻の程をお願いいたします。本日の演奏会が、智内君の今後の糧となるよう願ってやみません。会場にお出かけ頂いた皆様、そしてコンサートの企画、運営にご協力くださったスタッフの皆様に、心から感謝と御礼を申し上げます。
東京音楽大学 助教授
小林 出
●智内威雄は、圧倒的な情熱と繊細さをもち合わせ、その演奏には心酔させられてしまう。ラヴェルの「左手の為の協奏曲」や、ゴドフスキーの「宝石のワルツ」には思わず息をのむほどであった。
ドイツ・ハノーバー国立音楽大学 教授
アイナー・ステーン・ネックレベルク (Einar Steen-Nokleberg)